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- 2025/10/13
ブランドとして記憶に残るデザインとは? 脳科学と心理学からひもとく統一感の力

目次
「なぜ、あのブランドは強く記憶に残るのか?」
そう問いかけたとき、答えは単におしゃれなデザインだからではありません。実は、人の脳や心理の働きに沿った“統一感”があるからです。私たちは無意識に「見慣れたもの」に安心感を抱き、同じ色や形が繰り返されることで「信頼できる」と感じるようにつくられています。これは脳科学や心理学の研究で裏付けられた事実です。
マーケティング担当者であれば「どうすればユーザーに思い出してもらえるブランドになれるのか」、広報やPRの方であれば「SNSや広告の表現がバラつくのはなぜか」、デザイナーやクリエイターであれば「デザインの意図を感覚ではなく根拠を持って説明したい」と思う瞬間があるのではないでしょうか。経営者から見ても「デザインに投資する意味をどう説明するか」という悩みはつきものです。
私が代表を務めるブランディング会社「LEFANA(レファーナ)」でも、同じ課題を抱える企業様と数多く向き合ってきました。共通して言えるのは、「ブランドの表現を科学的な視点から整理すると、社内も社外も納得しやすくなる」ということです。
この記事では、脳科学と心理学の観点から「なぜ統一感のあるデザインがブランドの記憶に残るのか」をわかりやすく解説します。専門的な知識がなくても理解できる内容ですので、ぜひブランディングのヒントを見つけてみてください。
得意なジャンル:美容、アパレル、グルメ、不動産、旅行、イベント
前職で東京ガールズコレクションの初期メンバーでロゴデザインなどのブランディングを担当。その後独立して飛び込み営業で桂由美ホームページを1000ページ受注、小室哲哉プロデュースユニットのジャケットデザインのディレクション。ほかSIXPADのインスタ撮影をLAでプロデュース、伊藤忠リーテイルリンク様の商品ブランディングを行っています。
一貫したビジュアルが記憶に与える影響
なぜ、一度見ただけで思い出せるほど記憶に残るブランドと、すぐ忘れてしまうブランドがあるのでしょうか。その違いを生む大きな要因が 「一貫したビジュアル」です。
人間の脳は膨大な情報を瞬時に処理していますが、その中で長期記憶に残るのは「わかりやすく」「繰り返される」情報です。心理学の研究でも、同じ色や形が繰り返されると、「親しみ」と「信頼感」が生まれることが示されています。
ブランディングにおいても、同じロゴ、同じ色、同じトーンのデザインを繰り返し見せることで、「これはあのブランドだ」と脳が素早く認識するようになります。これがブランドの記憶効果を高める第一歩です。
1. 脳は「統一感」を好む
脳科学の分野では、人間の脳は「秩序あるパターン」を好むとされています。たとえば、心理学者ゲシュタルトの法則に「類同の法則」があります。同じ色や形のものを人は「まとまり」として認識しやすい、というものです。
SNSのフィードを例に考えてみましょう。投稿ごとに色やトーンがバラバラだと、ユーザーは「同じ企業が発信している」と認識しづらくなります。ブランドカラーやフォント、写真のテイストが揃っていると、「これはあのブランドだ」と直感的に認識できます。これは脳が「一貫性」を見つけると安心感を覚え、情報を記憶に残しやすくなるためです。
つまり、統一感のあるデザインは、「見やすい」以上に「記憶に残りやすい」という効果を持っています。
2. 信頼と安心を生む「トーン&マナー」
ブランドの記憶を強める要素は、色や形といったビジュアルだけではありません。言葉の「トーン&マナー」も重要です。
たとえば、SNSで「フランクな口調」と「堅いビジネス調」が混在していると、読者は「どんなブランドなのか」がわからなくなります。しかし、一貫した言葉づかいを守れば、発信のたびに「ブランドの人格」が強く印象に残ります。
心理学的に、人は「一度感じた印象」を繰り返し確認することで、その印象を強固にします。ブランディングで言えば、統一されたトーン&マナーを繰り返すことで「信頼できる」「親しみやすい」といったブランドイメージが固まり、長く記憶に残るのです。
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3. 記憶の定着には「繰り返し」が必要
ブランドを記憶に残すには、「繰り返し」が不可欠です。心理学には「単純接触効果(ザイアンス効果)」と呼ばれる法則があります。同じものに何度も接触することで、好意度が高まるという現象です。
たとえば、SNSで同じトーンの写真やコピーが継続的に流れてくると、ユーザーは無意識に「親近感」を抱くようになります。これは、単発の広告よりも、ブランド全体の一貫したデザインや表現を続けることのほうが、強いブランディング効果を持つことを示しています。
私たちレファーナでも、インスタグラムや採用サイトで「ブランドらしさを一貫させた表現」を整えた結果、ユーザーから「世界観が好き」「雰囲気に共感できる」といった声をいただいた事例があります。
4. 感情と記憶をつなぐデザイン
脳科学の研究によれば、記憶は「感情」と強く結びついています。つまり、「ただ見た」よりも「心が動いた」ときのほうが長く記憶されやすいのです。
色や形、フォントの選び方一つで、人の感情は大きく左右されます。赤は「情熱」、青は「誠実」、緑は「安心」といった心理効果はよく知られていますが、これらをブランド全体で統一することが、ユーザーの感情を揺さぶり、記憶に刻むきっかけとなります。
ブランドの一貫性があると、SNSや広告を見た瞬間に「安心感」や「親近感」を呼び起こし、その感情とともにブランドが記憶に残ります。これこそが、デザイン心理学をいかしたブランディングの効果です。
5. 「統一感」が競合との差になる
数多くの情報があふれる今の時代、ユーザーは次々と新しいブランドに出合います。そこで差を生むのは、ブランドを「記憶に残す力」です。
もし競合他社のSNSや広告がバラバラなトーンだった場合、ユーザーの記憶には残りにくいでしょう。もし自社が一貫性のあるビジュアルを持っていれば、比較の場面で「そういえばあのブランド」と思い出してもらいやすくなります。
この「思い出してもらえるかどうか」が、購買行動や応募行動の大きな分かれ目になります。ブランディングの観点から見れば、記憶に残るデザインこそが最強の差別化要因なのです。
6. レファーナでの取り組み
レファーナでは、ブランドガイドラインの策定支援を通じて、数多くのクライアント企業様と「一貫したビジュアル表現づくり」に取り組んできました。単にデザインを整えるのではなく、脳科学や心理学の知見を取り入れながら「どうすれば記憶に残るか」を重視して設計しています。
たとえば、SNS用の写真トーンを揃えるだけでなく、コピーの言葉づかいやフォントサイズまで明確にルール化することで、「ブランド全体の人格」が浮かび上がります。その結果、ユーザーの記憶に残りやすくなり、信頼や共感を得られるのです。
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以上のことから、一貫したビジュアル表現は、単にきれいに見せるためのものではなく、人間の脳や心理の仕組みに沿った、極めて実践的なブランディング戦略と言えます。
- 脳は統一感を好み、記憶に残しやすい
- 繰り返し触れることで、親近感と好意が高まる
- 感情と結びつくことで、長期に記憶される
このような効果を理解し、デザインやトーンを統一することこそが「記憶に残るブランド」への近道です。
脳が覚えるデザインと、色・文字・形・余白の心理学
ブランドのデザインは「センス」だけで決まるものではありません。実は、色やフォント、形、余白といった要素には、人間の脳が持つ認知の仕組みが深く関わっています。つまり、どう見えるかだけではなく、どう感じ、どう記憶されるかを決めているのです。ここでは、色・フォント・形・余白が脳に与える心理的効果を整理し、ブランド表現にどういかせるのかを解説します。
1. 色と脳の関係:感情を動かす第一印象
色彩心理とブランドイメージ
人が最初にブランドを認識するとき、最も強い影響を与えるのは「色」です。視覚情報のうち、脳に入るのは約80%が色だと言われています。ブランドカラーの決め方次第で、人に覚えられるかどうかが大きく変わるのです。
- 赤:情熱・行動力・緊張感
- 青:誠実・信頼・冷静さ
- 緑:安心・自然・調和
- 黄色:明るさ・ポジティブ・注意喚起
- 黒:高級感・威厳・力強さ
たとえば、金融機関やBtoBサービスでは「青系」が多く採用されます。これは「信頼」「堅実」といった心理的効果を活用しているためです。ファッションブランドが黒を多用するのも、高級感や特別感を脳に刷り込む戦略です。
色の繰り返しが「記憶」を強化する
同じブランドカラーを繰り返し見せられると、脳はその色とブランドを無意識に結びつけます。インスタグラムのフィードで、常に同系色を基調とした投稿が並んでいるブランドは、パッと見ただけで「あの会社だ」とわかります。これが「色の統一」が持つ記憶定着効果です。
2. フォントと脳の関係:「声」を形にする
文字はブランドの人格を映す
フォントは単なる「読みやすさ」を超えて、ブランドの人格を表現します。心理学的には、人は文字の形から無意識に「声」や「トーン」を感じ取っています。
- 丸ゴシック体:やわらかさ、親しみやすさ
- 明朝体:信頼性、フォーマル、知性
- サンセリフ体(欧文):シンプルさ、現代的、洗練
たとえば、子ども向け商品に明朝体を使うと「固い」印象になり、親しみが湧きにくくなります。逆に、親しみやすさを演出したいのに硬質な書体を使えば、心理的な違和感を生んでしまいます。
読みやすさは「記憶のしやすさ」に直結
脳科学の研究では、読みやすい文字は情報処理がスムーズになり、記憶の定着率も高まるとされています。極端に装飾が多いフォントは「おしゃれ」ではあっても、長文の記憶には向きません。ブランドサイトや記事、パンフレットでは「デザイン性」と「読みやすさ」の両立が必要です。
3. 形と脳の関係:本能に働きかけるシルエット
人は「形」に感情を持つ
SEOでは「質の高いコンテンツ」が重視されますが、質の高さは情報の正確さだけではありません。ブランドの世界観と調和しているかも大切です。
形は、もっとも原始的に脳に影響を与える要素の一つです。心理学では「丸い形は安心感」「尖った形は警戒心」を呼び起こすと言われています。
- 丸や楕円:柔らかい・親しみ・安心
- 四角や直線:安定・堅実・秩序
- 三角や鋭角:力強さ・緊張感・挑戦
企業のロゴを思い出してみてください。丸みのあるロゴは「フレンドリーさ」、角ばったロゴは「信頼と堅実さ」を感じさせます。このように、形は一瞬で感情を刺激し、ブランドの印象を記憶に結びつけます。
繰り返される形が「ブランドらしさ」をつくる
SNS投稿やWebサイトで同じシルエットやアイコンを繰り返すと、視覚的なパターンが脳に刷り込まれます。形の一貫性は「ブランドの“らしさ”」を支える重要なピースです。
4. 余白と脳の関係:安心感と理解度を高める空間
余白は「沈黙のデザイン」
デザインで見落とされがちなのが「余白」です。余白が狭すぎると脳は情報を処理するのに疲れてしまいます。心理学的には、余白は「呼吸の空間」であり、情報を整理しやすくする効果があります。
実験では、余白があると読解力が20%向上したという研究結果もあります。つまり、余白は単なる空きスペースではなく、脳に「理解しやすい」と感じさせる要素なのです。
余白が高級感を演出する
高級ブランドの広告やWebサイトは、情報量を詰め込まず、大きな余白を持たせています。これは「ゆとり」を見せることで、脳に「上質」「特別」という印象を残す戦略。余白は「見せないこと」で強いメッセージを伝える方法です。
5. 色・フォント・形・余白の要素を統合する効果
色・フォント・形・余白はそれぞれ独立した要素ではありますが、ブランドデザインにおいては必ず「組み合わせ」で効果を発揮します。
青(信頼) × 明朝体(知性) × 四角形(安定) × 広い余白(上質)
→ 信頼と堅実さを打ち出す金融ブランドに最適
黄色(ポジティブ) × 丸ゴシック(親しみ) × 丸い形(安心) × 余白少なめ(活気)
→ 楽しさや元気を表現したいエンタメブランドに効果的
このように「なぜそのデザインなのか」を心理学的に説明できると、ブランドの説得力が高まります。
6. レファーナでの実践例
私たちレファーナでも、企業のブランドガイドラインを策定する際には、色やフォント、形、余白の心理的効果を整理します。単に「かっこいいから」「流行っているから」ではなく、「人の記憶に残るために、この要素を選んだ」という説明ができることが重要です。
あるクライアント企業様では、採用サイトのデザインを刷新する際に、丸みのあるフォントと広めの余白を取り入れました。その結果、「親しみやすさ」と「信頼感」の両方が伝わり、応募数が増加しました。感覚ではなく、脳科学や心理学を根拠にしたデザインだからこそ、社内でも納得感が高かったのです。
以上、色・フォント・形・余白は、ブランドの「見た目」を決めるだけでなく、人の記憶や感情に直結する要素です。
- 色:感情を呼び起こし、繰り返しで記憶に残る
- フォント:ブランドの人格を伝え、読みやすさで記憶を助ける
- 形:感情を直感的に動かし、印象を強める
- 余白:脳を安心させ、理解度を高め、高級感を演出する
これらを統一的に設計することが「記憶に残るブランド」をつくる最短ルートです。
ブランドとしての「らしさ」がわかる投稿例
ブランドの世界観を伝える方法は、広告やWebサイトだけではありません。今の時代、もっともユーザーの目に触れるのはSNS投稿です。インスタグラムやX、TikTokなどで日常的に発信する写真やコピーは、そのまま「ブランドの人格」を形づくります。
ここで重要なのが「らしさの一貫性」です。色・フォント・写真の雰囲気・コピーのトーンなどが統一されているかどうかで、ユーザーが受け取る印象は大きく変わります。では、「記憶に残る投稿」の事例を見ていきましょう。
事例A:ライフスタイルブランドの一貫性
Aのブランドコンセプト
ライフスタイルブランド「A」は、20〜30代女性をターゲットに「自分らしく暮らす」をコンセプトに展開しています。
投稿の特徴
- 写真はすべて自然光を生かした柔らかいトーン
- ブランドカラーである淡いベージュを背景やテキストに活用
- コピーは「暮らしをもっとシンプルに」「私らしい選択を」など、ポジティブで軽やかな表現
- フォントは角の取れた丸ゴシックで統一
効果
ユーザーがフィードをスクロールすると、どの投稿も一目で「Aの世界観」だとわかります。心理学的には「繰り返し」×「統一」が記憶に残りやすいので、自然と「心地よい暮らし」という印象が刷り込まれていきます。ブランドらしさを守ることで、フォロワーから「見ているだけで癒される」「暮らしを整えたくなる」といった共感の声が増加しました。
事例B:BtoB企業がSNSで信頼を構築
Bのブランドコンセプト
IT企業「B」は、中小企業向けにクラウドサービスを提供しています。「テクノロジーをもっと身近に」がミッションです。
投稿の特徴
- 投稿カラーは青を基調にし、信頼感と誠実さを強調
- フォントは明朝体を採用し、知性と信頼性を演出
- 写真は社員の自然な笑顔やシンプルなオフィスシーンを使用
- コピーは「わかりやすく」「親しみやすく」を意識し、難解な専門用語を避けている
効果
SNSではBtoB企業の発信は埋もれがちですが、ブランドのトーンを一貫させたことで「信頼できる会社」という印象が定着しました。SNS経由でセミナー参加や資料請求の問い合わせが増えた事例もあります。
統一感のあるビジュアルとコピーは、「指名検索」にもつながりました。つまり「B クラウドサービス」と会社名で検索される回数が増え、集客とブランディングの両立が実現できたのです。
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事例C:感情を動かすブランディング
Cのブランドコンセプト
ウェディングプロデュース会社「C」は、「心に残る一日を、あなたらしく」というコンセプトを掲げています。
投稿の特徴
- ブランドカラーは淡いピンクとホワイトで統一
- 写真は自然な笑顔、光の差し込むシーン、温かい空気感
- コピーは「大切な一日を、私たちらしく彩る」「思い出は色褪せない」など、感情に寄り添う言葉
- フォントはエレガントなセリフ体を使用
効果
心理学的に「感情と記憶は強く結びつく」ため、Cの発信はユーザーの心に深く残ります。ブランドのトーンを守ることで、結婚式を検討する人の「心に刺さる」コンテンツとなり、問い合わせにつながりました。
この事例では、ブランドらしさをSNSで一貫して伝え続けることが、ユーザーの「記憶」と「行動」を動かす力になることがわかりました。
投稿の一貫性が欠けた場合のリスク
ポジティブな事例を紹介しましたが、もし「ブランドらしさ」が守られなかったらどうなるでしょうか。
- ブランドカラーを無視した派手な広告を投稿してしまう
- デザイナーごとに写真加工のトーンが違う
- コピーが日によって「親しみやすい」と「堅苦しい」で揺れてしまう
こうした状況は、ユーザーに「このブランドはどんな会社?」という迷いを与えます。脳は統一感を好むので、バラバラな情報は「記憶に残らない」まま流されてしまうのです。
5. ブランドらしさを守る実務的な工夫
サンプル集を用意する
社内外で共有できる「OK例」「NG例」をまとめたサンプル集があると便利です。写真のトーンやコピーの言葉づかいを事前に示しておくと、迷わず投稿を作成できます。
テンプレート化する
SNSの投稿フォーマットを統一すれば、ブランドらしい世界観を崩さずに発信できます。レファーナでは、企業ごとに投稿テンプレートを制作し、運用の効率化と一貫性の両立を支援しています。
トーン&マナーを明文化する
コピーの言葉づかいを「親しみやすい口調」「専門用語は使わない」といったルールに落とし込むと、誰が書いても同じブランドの声になります。
以上のように、ブランドとしての「らしさ」は、抽象的なスローガンではなく日々のSNS投稿に表れます。
- 色やトーンを揃えることで「一目でわかる」ブランドに
- コピーの統一が「人格」を伝え、記憶に残す
- サンプル集やテンプレートで誰でも同じ表現ができる
投稿一つひとつは、ブランドの顔。ユーザーがブランドを「記憶して好きになる」ためには、「らしさ」を守る仕組みが不可欠です。レファーナでは、その仕組みづくりをサポートし、SNSや広告、Web全体を通して「愛されるブランド」へと育てていくお手伝いをしています。
特に「ブランドらしさの可視化」には力を入れています。ある食品メーカーでは、広告はおしゃれなのにSNS投稿は日常的でバラバラという課題がありました。ブランドガイドラインを策定し、写真のトーンやコピーの方向性を整えたところ、「SNSが広告と同じ世界観になった」と社内外で評価が高まりました。
統一感を損なわないためのチェックリスト
ブランドのビジュアルや言葉を統一していくとき、頭ではわかっていても「現場では忙しくて確認が漏れる」「担当者ごとに基準が違う」という問題が起こりがちです。人間の脳は複雑なルールを記憶し続けるのが得意ではなく、心理学的にも「確認の仕組み」を持つことでミスを防げると言われています。
ブランドの統一感を維持するには、誰もが使えるチェックリストを準備しておくことが重要です。以下に紹介する項目を整理すれば、新人から経営者まで、どんな立場の人でも「ブランドらしい」表現ができるようになります。
チェック1:ブランドカラーは正しく使われているか
- メインカラー・サブカラー・アクセントカラーは色指定どおりか
- 設定した色コード(RGB・CMYK・HEX)が再現されているか
- 背景や写真とのコントラストは十分か
色彩心理の観点では、色の一貫性が記憶に直結します。投稿や資料ごとに微妙に色味が変わると、ユーザーの脳は「別の情報」として処理してしまい、ブランドの統一感が弱まります。ブランドガイドラインに明記した数値を守るかどうかを必ず確認しましょう。
チェック2:ロゴは正しい形で配置されているか
- 縦横比を崩していないか
- 背景とのコントラストは保たれているか
- ロゴの周囲に適切な余白をとっているか
- 使用禁止例(色変更、影付け、縦横比の変形)を避けているか
ロゴは「ブランドの顔」です。心理学的にも、人の顔と同じように「違和感」に敏感に反応します。サイズや余白のルールを守っていなければ、ユーザーは無意識に「雑な印象」を受けてしまうのです。
チェック3:フォントは統一されているか
- 見出し用・本文用・キャプション用、すべて決めたフォントになっているか
- フォントサイズ、行間、字間は基準を守っているか
- 特殊フォントを独断で追加していないか
文字のトーンは「声」と同じ。異なる声で語りかけられると「このブランドは誰?」と混乱が生まれます。特にWebサイトやパンフレットでは、異なるフォントが混在するだけでブランドの一貫性は崩れやすいため、厳密にチェックしましょう。
チェック4:コピーのトーン&マナーは一貫しているか
- 呼びかけ方(あなた/お客様/みなさま)は揃っているか
- 語尾は「です・ます」か、それともフランクな表現か
- 禁止ワードや不適切な表現を避けているか
- ブランドらしい言葉を選べているか
心理学では「言葉は人格を形づくる」とされます。同じブランドが、あるときは堅苦しく、あるときは砕けた表現をすると、ユーザーは「どんな人なのかよくわからない」と感じてしまいます。トーン&マナーを一貫させることは、ブランドの人格を一貫して伝えるための基盤です。
チェック5:写真やビジュアルの方向性は揃っているか
- 明るさやコントラストの基準は守られているか
- 被写体の雰囲気(自然体/フォーマルなど)はブランドに合っているか
- 加工やフィルターの方向性は統一されているか
- SNSフィードを一覧で見たときに「整っている」と感じるか
心理学の「単純接触効果」でも示されるように、人は「繰り返し見る」ことで安心や好意を抱きます。写真やビジュアルの統一は、この繰り返し効果を最大化するために欠かせません。
チェック6:余白やレイアウトは読みやすいか
- 余白は十分に取られているか(窮屈に詰め込んでいないか)
- 見出しと本文の区切りは明確か
- 図やアイコンの配置に一貫性があるか
余白は「沈黙のデザイン」と呼ばれることもあります。脳は余白があると情報を整理しやすくなるため、理解度が向上し、ブランド全体への信頼感も高まります。
チェック7:デザインと言葉の一体感があるか
- 写真とコピーの雰囲気は合っているか
- ビジュアルとテキストで異なるメッセージを発していないか
- 情報量とデザインのトーンが釣り合っているか
脳は「矛盾」に敏感です。「写真が明るいのにコピーがネガティブ、デザインがポップなのに文章が堅苦しい」という不一致は、ユーザーの記憶に残らず、むしろ「違和感」として印象を損ないます。
チェック8:媒体ごとの発信に一貫性があるか
- Webサイト、SNS、パンフレット、営業資料で世界観は統一されているか
- 採用広報や求人広告でもブランドのトーンを守れているか
- 外部の広告代理店や制作会社にもブランドガイドラインが共有されているか
媒体ごとに表現がバラバラになるのは、よくある失敗です。ブランドは「どの接点でも同じ顔をしている」ことで記憶に残ります。媒体が変わっても一貫性を維持できているかを確認しましょう。
チェック9:外部パートナーが同じ基準で制作しているか
- デザイン会社やフリーランスにブランドガイドラインを渡しているか
- 制作物を納品前に「ブランドチェック」しているか
- 変更や修正の履歴を共有しているか
現場でよくあるのが、「外部委託のデザインがブランドらしくない」という問題です。チェックリストをもとに納品物を確認するだけで、修正コストや手戻りが大幅に減ります。
チェック10:ブランドガイドラインに更新の仕組みがあるか
- 定期的にブランドガイドラインを見直しているか
- 社内から「使いにくい」という声を拾っているか
- トレンドや市場変化に合わせた修正をしているか
ブランドガイドラインは一度作って終わりではなく、更新を重ねて「生きたルール」として運用することが大切です。チェックリストに「更新の有無」を入れることで、常に鮮度を保てます。
以上のとおり、統一感を維持するのは「担当者の感覚」ではなく「仕組み」です。
- 色・ロゴ・フォント・コピー・写真・余白を一貫させる
- 媒体や外部委託でも基準を揃える)
- 定期的に更新する
これらをチェックリストで明文化しておくことで、誰が担当してもブランドらしさが損なわれません。ブランドを記憶に残す力を高めるために、ぜひ実務に組み込みましょう。
レファーナでは、このようなチェックリストをブランドガイドラインに組み込み、クライアント企業様が迷わず運用できるようにサポートしています。 「色やロゴの指定を守る」だけではなく「写真とコピーの一体感をどう確認するか」といった細かい項目まで落とし込むことで、誰でも実務で使えるルールが整います。
あるクライアント企業様では、SNS投稿のたびに「これはうちのブランドらしいか?」と迷っていましたが、チェックリストを導入したことで、担当者が変わっても同じ基準で判断できるようになりました。その結果、フィード全体が整い、フォロワーからの「世界観が好き」という声が増加しました。
まとめ|統一感が「記憶に残るブランド」を作る
ここまで、「色・フォント・形・余白」といった視覚要素が脳に与える影響、そしてSNS投稿やチェックリストを通して、ブランドの統一感がいかに人の記憶に残るかを解説してきました。
脳科学や心理学の観点から見ても、人は「繰り返し」と「一貫性」のある情報に親近感や信頼感を抱きます。つまり、ブランドを覚えてもらう近道は、派手な広告を打つことではなく、「同じ世界観を積み重ねること」なのです。
色の統一は感情を、フォントの一貫性は人格を、形は本能的な印象を、余白は安心感を与えます。これらを意識して整えることが、ブランドらしさを育て、ユーザーの心に残る基盤になります。
レファーナでも、クライアント企業様のブランドガイドラインやSNS設計を支援しながら、「世界観が整った瞬間にブランドが息を吹き返す」シーンを数多く見てきました。デザインの統一は単なる見た目ではなく、企業の信頼と成長に直結する投資です。
ぜひこの記事をきっかけに、自社のクリエイティブを見直し、記憶に残るブランドを育ててみてください。その積み重ねが、やがて「愛されるブランド」として長く支持される未来につながります。
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